メトトレキサート(MTX)

メトトレキサート(MTX;リウマトレックス®カプセル、メトレート®錠など)について

 関節リウマチの診療において世界中でもっとも使用されている、治療の中心となる重要な飲み薬(アンカードラッグ)です。細胞の増殖を抑える働きがあり、リウマチの関節炎の主体である滑膜の増殖を抑制します。

 1999年に本邦において認可されて以降、8 mg/週までしか使用が許されませんでしたが、葉酸製剤(フォリアミン®)の併用や、適切なリスク評価による用量調節を行えば16 mg/週までは安全性を担保したまま有効に使用できることが示され、2011年2月からは、16 mg/週まで、第一選択薬として用いることができるようになりました。

 妊婦や、メトトレキサートへの過敏症を有する場合、胸・腹水を認める場合、重大な感染症や血液・リンパ系・肝・腎・呼吸器障害を有する場合はメトトレキサートは使えません。また、ウイルス性肝炎や結核などの感染症にかかっていないかを開始前にチェックします。

 使い方としては、患者さんの年齢や腎機能、血球数などを考慮して、初期量として4~8 mg/週で開始し、効果を見ながら4週程度ごとに2~4 mg/週ずつ増量します。1週間のうち1~3回に分け、1~2日にかけて12時間間隔で服用し、服用日以外の5~6日は休薬します。後述する副作用予防のため、メトトレキサートの最終服薬日の翌々日に、メトトレキサートの働きを和らげる効果のある葉酸を飲みます。例えば、当院では下記のように飲んで頂くことが多いです。

メトトレキサートの内服の例

<4 mg/週>  1日目 朝 2 mg、夕 2 mg  (基本的に葉酸なし)
<6 mg/週>  1日目 朝 4 mg +夕 2 mg、             3日目 朝 葉酸 5 mg
<8 mg/週>  1日目 朝 4 mg +夕 2 mg、 2日目 朝 2 mg、     4日目 朝 葉酸 5 mg
<10 mg/週> 1日目 朝 4 mg +夕 2 mg、 2日目 朝 4 mg、      4日目 朝 葉酸 5 mg
<12 mg/週> 1日目 朝 4 mg +夕 2 mg、 2日目 朝 4 mg +夕 2 mg、 4日目 朝 葉酸 5 mg
<14 mg/週> 1日目 朝 4 mg +夕 4 mg、 2日目 朝 4 mg +夕 2 mg、 4日目 朝 葉酸 5 mg
<16 mg/週> 1日目 朝 4 mg +夕 4 mg、 2日目 朝 4 mg +夕 4 mg、 4日目 朝 葉酸 5 mg
 

上記7日間を1単位として、繰り返します。最近の研究では、メトトレキサート 10 mg/週と20 mg/週では効果に大きな差はなかったとも報告されており、当院では効果を見つつ、患者さん全体での平均として10~12 mg/週程度まで増量すること多いです。それでも効果が不十分の場合は16 mg/週までの増量を試みます。
 
 また、副作用に応じて葉酸の量を適宜増量します。メトトレキサートは細胞の生まれ変わり(新陳代謝)を抑えるというメカニズムのため、体の中の細胞のうち新陳代謝の早い臓器に副作用として障害が生じやすいです。具体的には、口内炎や皮膚潰瘍などの皮膚粘膜障害、嘔気・食欲低下などの胃腸障害、骨髄抑制に伴う血球減少(無症状のことが多い)、感染症、肝機能障害(無症状のことが多い)、リンパ節が腫れるリンパ増殖性疾患、肺障害などがあります。全身の診察や、採血・採尿、レントゲン検査などによって、これらの副作用の出現に注意を払いながら、メトトレキサートを使用していきます。

 ちなみに、肺障害は、一種のアレルギー症状で起きると考えられており、メトトレキサートの用量によらず、少量でも発生することがあります。肺障害の症状としては、痰の絡まない空咳と高熱、呼吸苦です。胃腸障害や血球減少、肝機能障害は、メトトレキサートの用量に応じて、増やすと起きやすくなります(用量依存性)。脱水や高齢などで腎機能が悪いとメトトレキサートの血中濃度が高くなりやすく、これらの用量依存性の副作用が起きやすくなります。風邪などでの発熱時や、胃腸炎で下痢や嘔吐がある時は脱水状態になりやすいため、メトトレキサートの服用は中止して下さい。腎機能の悪い方は副作用が起こりやすいため、高用量は避けるか、メトトレキサートの使用そのものを避けることもあります。


 副作用への対処の基本は、メトトレキサートの減量もしくは中止です。感染症であれば、メトトレキサートを一旦中止した上で、疑われる病原体に応じた適切な抗菌薬、抗真菌薬、抗ウイルス薬などによる治療を行います。なお、メトトレキサートを長期使用している場合には、一時的に服薬を中止しても急にリウマチの症状が悪化することはまれです。

 急性の肺障害の場合には、メトトレキサートを中止し、できれば呼吸器専門医のいる施設に入院の上、副腎皮質ステロイド大量療法などの治療を行います。メトトレキサートによる薬剤性肺障害は、適切なタイミングで適切に治療すればほとんどすべての場合で命に関わることなく治ります。



<関連資料>
・リウマチ学会発行の「メトトレキサートを服用する患者さんへ」
http://www.ryumachi-jp.com/pdf/mtx.pdf