骨粗鬆症(こつそしょうしょう)について
骨粗鬆症の原因は、加齢や閉経に伴う「原発性」と、他の病気や薬剤によって引き起こされる「続発性」に大別されます。続発性骨粗鬆症の原因として、糖尿病、CKD(慢性腎臓病)、関節リウマチ、動脈硬化、副甲状腺機能亢進症・クッシング症候群などの内分泌疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、ステロイドの長期使用に伴うものなどがあります。また、骨粗鬆症自体も動脈硬化や血管の石灰化と関連することが知られています。このように、骨粗鬆症の診療においては、単に「骨」のみならず、内科的な全身の管理が必要とされます。
骨粗鬆症による骨折の危険因子には下記のものが報告されています。
・低骨密度(骨密度YAM1低下で1.5~2倍リスク上昇)
・既存骨折(2倍リスク上昇、椎体骨折だと4倍)
・喫煙(1.3倍リスク上昇)
・飲酒(1日にエタノール24~30g摂取で1.4倍リスク上昇)
・ステロイド薬使用(2.3倍リスク上昇)
・親が骨折歴あり(大腿骨近位部だと2.3倍リスク上昇、その他の骨折歴で1.2~1.5倍リスク上昇)
・運動不足(最大で2倍リスク上昇)
・体重、BMI
骨粗鬆症に関係する骨代謝マーカー
マーカー | 略語 | 検体 | 基準値 | 備考 |
---|---|---|---|---|
骨形成マーカー | ||||
骨型アルカリフォスファターゼ | BAP | 血清 | 閉経前女性 2.9~14.5 (μg/L) 男性 ~20.9 閉経後女性 ~22.6 |
腎機能低下の影響を受けない |
I型プロコラーゲン-N-プロペプチド | P1NP | 血清 | 閉経前女性 17.1~64.7 (μg/L) 男性 ~66.8 閉経後女性 ~79.1 |
腎機能低下の影響を受けない |
骨吸収マーカー | ||||
デオキシピリジノリン | DPD | 尿 | 閉経前女性 2.8~7.6 男性 ~5.6 閉経後女性 ~13.1 |
腎機能低下の影響を受ける |
I型コラーゲン架橋N-テロペプチド | NTX | 尿 | 閉経前女性 9.3~54.3 (nmolBCE/mmol・Cr) 男性 ~66.2 閉経後女性 ~89.0 |
腎機能低下の影響を受ける |
I型コラーゲン架橋N-テロペプチド | NTX | 血清 | 閉経前女性 7.5~16.5 (nmolBCE/L) 男性 ~17.7 閉経後女性 ~24.0 |
腎機能低下の影響を受ける |
I型コラーゲン架橋C-テロペプチド | CTX | 尿 | 閉経前女性 40.3~301.4 (μg/mmol・Cr) | 腎機能低下の影響を受ける |
I型コラーゲン架橋C-テロペプチド | CTX | 血清 | 閉経前女性 0.100~0.653 ng/mL | 腎機能低下の影響を受ける |
酒石酸抵抗性酸フォスファターゼ-5b | TRACP-5b | 血清・血漿 | 閉経前女性 120~420 男性 ~590 閉経後女性 ~760 |
腎機能低下の影響を受けない |
骨マトリックス関連(骨質評価)マーカー | ||||
低カルボキシル化オステオカルシン | ucOC | 血清・血漿 | ~4.5 (ng/mL) |
骨粗鬆症の治療薬
・ビスホスホネート薬
エチドロン酸 (ダイドロネル®: 1日1回200mgを食間に14日間内服後10~12週間休薬というサイクルを繰り返す)
アレンドロン酸 (フォサマック®、ボナロン®: 1日1回5mg錠もしくは週1回35mg錠 起床時に内服〔ボナロンのみ 月1回 点滴静注〕)
リセドロン酸 (ベネット®、アクトネル®: 1日1回2.5mg錠、週1回17.5mg錠もしくは月1回75mg錠 起床時に内服)
ミノドロン酸 (リカルボン®、ボノテオ®: 月1回内服)
イバンドロン酸 (ボンビバ®: 月1回静注、もしくは月1回内服)
ゾレドロン酸 (リクラスト®: 年1回静注)
・女性ホルモン薬
エストリオール (エストリール®: 0.5もしくは1mg 1日1回内服)
エストラジオール (エストラーナ®: 2日に1枚下腹部か臀部に貼付)
・SERM(選択的エストロゲン受容体モジュレーター)
ラロキシフェン (エビスタ®: 1日1回60mg内服)
バゼドキシフェン (ビビアント®: 1日1回20mg内服)
・活性型ビタミンD3薬
アルファカルシドール (アルファロール®、ワンアルファ®: 1日1回0.5~1μg内服)
カルシトリオール (ロカルトロール®: 1回0.25μg1日2回内服)
エルデカルシトール (エディロール®: 1日1回0.5~0.75μg内服)
・カルシウム薬
L-アスパラギン酸カルシウム (アスパラ-CA®: 1日1.2gを2~3回分服)
リン酸水素カルシウム (リン酸水素カルシウム®: 1日1gを3回分服)
・ビタミンK2薬
メナテトレノン (グラケー®: 1日45mg、3回分服)
・カルシトニン薬
エルカトニン (エルシトニン®: 週1回筋注)
サケカルシトニン (カルシトラン®: 週2回筋注)
・副甲状腺ホルモン(PTH)薬
テリパラチド (フォルテオ®:毎日皮下注〔24か月間まで〕、テリボン®:週1回皮下注〔24か月間まで〕)
・抗RANKL抗体
デノスマブ (プラリア®: 6か月ごと60mg皮下注)
・抗スクレロスチン抗体
ロモソズマブ (イベニティ®: 1か月ごと210mg皮下注〔12カ月間〕)
(商品名®は先発品の名称です。後発品(ジェネリック)が存在する薬剤もありますが多種のため本頁では記載していません。)
2019年1月9日、抗スクレロスチン抗体のロモソズマブ(Romosozumab; イベニティ®)が世界に先駆けて本邦で承認されました。さらに現在、PTHrP(副甲状腺ホルモン関連蛋白)アナログ製剤のアバロパラチド、ブロソズマブ(Blosozumab)等が臨床試験のフェーズに入ってきており、近い将来使えるようになるかもしれません。なお、カテプシンK阻害薬のオダナカチブ(Odanacatib)は第3相試験で脳卒中のリスク増加が認められたため開発が中止されました。